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木内醸造 専務

木内 浩太

Kouta Kiuchi

緑を愛する
不器用なアイツ

  
木内 浩太

木内醸造は、蓼科山の伏流水が豊かに湧く佐久市大沢にある。創業は安政二年、三代目の兄が銀行を創設し、弟が醸造の近代化を進め、また佐久鉄道の役員となって佐久地域の経済発展に寄与してきた事業家である。看板商品は、清酒初鶯と焼酎天雪だ。日本で唯一、掛米を寒にさらし凍らせて仕込む「凍米造り」の「凍米」もある。広い敷地の中には、厚い土壁の貯蔵庫や、大正時代に建てられた酒母室などがあり、蔵の歴史を今に伝えている。蔵元の息子にとって、東京農大といえば醸造科が既定路線なのだが、木内はその造園科に進学した。「たぶん、中学生の頃から植物や自然に興味があったのだと思います。高校で園芸科に行きたかったのですがかなわなかったので、大学で造園科を選びました」。卒業後は東京の造園や植物のリースを手掛ける会社に就職した。都内の様々な会社に観葉植物を配達したり、イベント会場でのグリーンの飾り付けをしたりする仕事だった。夜通し会場の飾りつけをして数時間後には会社に出勤するなど、体力的にはキツイ仕事だったが、同世代の仲間が多く、忙しくも楽しい日々だったという。

 
木内 浩太

「10年過ぎて、もう帰らなくてもいいかなと思っていたところに、会長(父)から戻らないかと言われました。1年考えさせてほしいと保留しましたが、結局帰ってきました」。何もかも慌ただしい都会の生活の中で、どこかいたたまれない気持ちもあったと振り返る。佐久に戻ってからは、営業で外回りの仕事を中心にしてきたが、仕込みで忙しい時期には蔵に入ることもある。休みは日曜・祝日のみだが、「蔵元の一員になったからには、人生=仕事だと思っています。それは苦ではないけれど、醸造について学んでいないことには少し引け目を感じていて、若葉会のほかの人たちの酒造りへの情熱からいつも刺激を受けています」と話す彼は、とても正直だと思う。東京にいた頃より仕事の幅は広く、酒に関わるイベントのほか、地域の行事にも蔵元として参加する機会も多い。「どこまでが仕事と明確に線は引けないけれど、きっとすべてがつながっているんです。ゴールは見えないけど、歩き続けていく感じです」。取材した時期は、消防団の操法大会に向けた練習が佳境を迎えていた。「運動はニガテなんですけど…」と言いながら、黙々と練習している姿が目に浮かぶ。真面目で、無器用で、仕事まみれ。こんな男を支えてくれる、しっかり者の女性が現れてくれたら…と、願ってやまない。

木内醸造株式会社

385-0045 長野県佐久市大沢985
TEL 0267-62-0005
FAX 0267-62-2652
https://sites.google.com/view/hatuuguisu/

創業安政二年。信州佐久大澤村で木内清兵衛が酒造業を開始して160年以上。明治42年には15馬力のボイラーを入れ、当時としては画期的な機械化に切り替えた。東京の醸造試験場から講習生が来場したという。大正8年には 9千石に達する。戦時中は陸軍省御用でこも樽が大量に海を渡り兵士から礼状が相次いだ。平成14年株式会社に移行。現在は清酒「初鶯」、焼酎「天雪」を代表銘柄として主に地元で愛飲されている。

  • 初鶯

    木内醸造の代表銘柄である普通酒。精米歩合65%で規格的には特定名称酒に当たる高品質な一般酒である。芳醇な味わいだが飲み飽きしない旨口のお酒。

  • 凍米

    長野県佐久地方の寒冷な気候を利用し独自の製法にて作られた純米酒。蒸したお米を一晩寒冷な空気にさらすことによって自然凍結させ翌朝、掛け米として投入する。これによりお酒の雑味成分の分解をうながし、すっきりとした飲みやすい甘口のお酒に仕上げることができる。

  • オールド天雪 米 35°

    選抜された米焼酎を10年以上貯蔵し熟成させた本格焼酎。どなたが飲んでも間違いない評判の商品。まろやかな味と香りの中にも深みが加わったおすすめの商品。

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