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千曲錦酒造 製造部課長

原 知行

Tomoyuki Hara

自分に帰る酒
自分に帰る時間

  
原 知行

「舞台に立つ人」――これが写真から受けた原の第一印象だった。端正なだけでなく、独特の存在感。どんな人なのだろう?訪ねた千曲錦酒造は佐久で最大の酒造会社だ。1万5千坪に及ぶ敷地には、精米蔵から始まる一連の酒造りの施設や、焼酎を寝かせるオーク樽が入った貯蔵庫などが立ち並ぶ。出迎えてくれた原は、柔らかい物腰のジェントルマンで、若葉会の中では数少ない「バブルの頃を知る人」だそう。日本酒の消費量は昭和40年代後半をピークとして下がり続けているのだが、原が働き始めた頃はまだまだ「いい時代」で、仕事をやればやるほど実績がついてきた。29歳で地元に戻ってからは、商品企画や金額設定を含めた商品設計を行ってきた。水墨画で内閣総理大臣賞を受賞した墨心透映流の宗家、名立帰山氏の名前を冠した「帰山」は、“杜氏こだわりのお酒”であるのだが、原にとっても思い入れのある商品だ。「山へ帰る」「ふるさとへ帰る」「自らへ帰る」「酒造りの原点に帰る」という意味が込められている。端麗辛口が大ブームだった時期に、「それとは一線を画したコアなファンをつかむような酒を」と企画し、1996年に発売した。りんご酸を多く作る酵母を使い、日本酒度が-16、酸度が3.0、濃醇旨口で酸味が際立つ個性的な酒になった。

 
原 知行

豚の角煮や豆腐よう、ナチュラルチーズなど旨味の凝縮したものにも負けない強さもあるという。試飲してもらいながら販売を行い、この商品をきっかけに酒専門店とのつながりもできた。長期熟成酒の評判もよく、新しいジャンルを築いた手ごたえを感じている。「酒販店や飲食店で、食べ物に合わせて勧めてもらえる5本のうちの1本になれたら、と思っています」と原は言う。普通酒は経営の柱であることに変わりはないが、低アルコール酒もコンスタントに売れている。「年齢を重ねたら、ぬる燗にしたり和らぎ水を添えたりと、自分も身体に優しい飲み方をするようになりましたね」。一日の仕事を終えた後に一杯を味わうのは、まさに自分に帰る時間である。原がもうひとつ大切にしているのは、サザンオールスターズをカバーするおやじバンド、「カザンオールスターズ」のベース担当として活動する時間だという。ああ、だから「舞台に立つ人」の雰囲気があったのか、と納得する。実は、おやじバンドフェスティバルの長野県大会で優勝するほどの腕前&人気なのだ。浅間山の麓で、熱い演奏をする「カザンオールスターズ」。仕事を離れる“大人の部活”と仲間を持てる人の人生は、きっといい酒に負けないくらい味わい深いに違いない。

千曲錦酒造株式会社

385-0021 長野県佐久市長土呂1110
TEL 0267-67-3731
FAX 0267-68-5467
http://www.chikumanishiki.com/

浅間山麗に位置する厳寒の地にて創業330余年の年月を刻み続けてきた酒蔵千曲錦。信州産の酒米「美山錦」を主原料に仕込み水は浅間山系伏流水で醸す。杜氏重田の優しさ、やわらかさがお酒の味わいに現れる。丁寧に丹精込めて、「蔵独自の味わい」を情熱を注ぎ醸している。

  • 純米吟醸 千曲錦

    信州の酒造好適米「美山錦」を高精白し長期低温もろみで醸した純米吟醸。すっきりとしていて尚且つ純米の米の旨みとフルーティーな芳香が特徴です。(長野県原産地呼称認定酒)

  • 特別本醸造 吉田屋治助

    創業天和元年、創業の屋号「吉田屋」と株式会社改組の社長「治助」の名を冠したお酒。燗をして美味しい酒質設計にて醸した特別本醸造 湯煎でゆっくりと温めてお楽しみください。

  • 帰山 参番 純米吟醸生酒

    「帰山」には「山に帰る」「故郷へ帰る」「自らに帰る」そして「酒造りの原点へ帰る」の意があります。時代に流されず酒造りの原点に立ち返ってこだわった濃醇旨口純米酒。個性際立つ酒質で最後に帰ってくる地酒を目指します。

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