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黒澤酒造 代表

黒澤 孝夫

Takao Kurosawa

No Sake, No Life!
農酒、呑生活

  
黒澤 孝夫

アメリカで人気が出たのは、世界のクロサワと同じ名前だったからかもしれない。しかし、輸出が増え続けているのは、Kimotoの骨太な味わいとそれでいて透明感のあるこの酒の個性が評価されているということだろう。今では輸出が蔵の生産量の1/3に上る。世界を視野に入れながらも、一方で自社の田んぼで米を育て、畑で白うりやみょうがを育て粕漬けも製造している。「農業と食とお酒は切り離せないもの。酒造りと農業を通して食の提案まで行っていきたいと考えています。地域の食材やそれに関わる方々との交流により、いろいろな発見があり、また、発信して頂くこともあります。何より自分自身がくいしん坊なんでしょうね」。最近では、蔵の乳酸菌でザワークラウトを作ったり、チーズ工房に持ち込んでナチュラルチーズを作ってもらったりもしている。「イメージしたものを形にしていくのが好きなんですよね。でも、広げるだけ広げて収拾がつかなくなっているから、そろそろどうにかしないと」と苦笑いする。大学の醸造科を出たが、杜氏にはならなかった。社長と兼務すれば中途半端になってしまいそうだし、6歳下の洋平が同じ年に蔵に入り、広島の醸造研究所に研修に行くことになって、それならば自分は社長に専念しようと決めた。「小心者で、先頭で引っ張るより本当はサブのほうが向いていると思う」と言うが、長野県酒造組合の青年部である「若葉会」の会長も務めるのだから、周りはそうは思うまい。

 
黒澤 孝夫

先代の頃から地元の佐久穂町を元気にする様々な取り組みにも関わってきたそのDNAは、孝夫社長にも受け継がれている。食で町を元気にする取り組み「町民キッチン」でご当地食材を使った期間限定のチャレンジレストランには、喫茶くろさわを快く貸してくれた。ツールド八ヶ岳に合わせて開催される春の蔵開放や、八千穂高原の白樺樹液の商品化、八千穂高原スキー場での雪中貯蔵酒なども地元の活性化につながっている。佐久穂町で栽培されるプルーンやブルーベリーのリキュールや、地元のお米にこだわった商品にも意欲的に取り組む。会員が集まり、田植えや稲刈り、仕込み、搾り、唎き酒などを共に行う「八千穂美醸会」は、今年で16シーズン目となる。「町内外から集まってくださる方々と、長いおつき合いのできる貴重な場です。一緒に年齢を重ねる仲間に加え、若い人にも加わってもらいながら、日本酒や農業、佐久穂町のことを知っていただきたいと考えています」という。社長も杜氏も働き盛りで脂の乗っている現在だからこそ、幅の広い挑戦ができ、そこから何を選んで熟成させていくのかを見定めていくことができるのではないだろうか。静かで口数の少ない杜氏や、社内では仏頂面という会長のことを「黒澤は飲まないと開かないので」と言うが、自身もだいぶ奥ゆかしい。飲ませて、酔わせて、開いてみたいが、酔うと寝てしまうらしいので、その加減が難しい。

黒澤酒造株式会社

384-0414 長野県南佐久郡佐久穂町穂積1400
TEL 0267-88-2002
FAX 0267-88-2047
http://www.kurosawa.biz/

安政5 年(1858) 創業。八ヶ岳と千曲川の雄大な自然環境の恩恵を生かし全量長野県産米で大吟醸から普通酒まで醸している。自社での酒米栽培、精米も行い地の米、地の水、地の杜氏で名実ともに本来の地酒造りをしている。「kurosawa」ブランドでの海外進出もしている。

  • 井筒長 精撰

    地元で愛される濃醇辛口でキレのある味わい。信州らしいやや濃いめの肴を引き立て呑み飽きのしない定番酒。

  • 純米酒 生酛造り マルト

    ◯は太陽、トは登る。日が昇る、日の出の勢いを表す屋号。「甘酸辛苦渋」酒の五味のバランスが良く、燗良し冷良しの万能食中酒。

  • 生酛黒澤 特別純米酒

    生もと造りならではの骨太さと「ひとごこち」を使用したやわらかな口当たりと心地よい酸と深みのある味わいの絶妙なバランス。ぬる燗で楽しんでいただきたい旨口純米酒。

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