ホーム>13蔵14人>依田 昂憲
芙蓉酒造 企画開発部長

依田 昂憲

Takanori Yoda

誰も行かない道をゆく
クリエイターたかのり

  
依田 昂憲

中学・高校時代からバンドを組み、音楽で身を立てたいと思っていた。蔵を継ぐ気は当然なく、早稲田大学教育学部在学中を含め7年間ほど東京で音楽活動に没頭し、インディーズ・レーベルに所属していたこともある。しかし、25歳になった頃「ここから先どうするのか」を真剣に考えた。蔵を継ぐのはイヤだったけれど、音楽で身を立てるのは難しいし、親も年だし、どうにかできるのは自分しかいない…。やむにやまれず帰ることを選んだ。が、すぐに帰ったわけではなく、心の準備期間にたっぷり2年を割いた。滝野川で醸造を学ぶだけでなく、銀座の飲食店でサービスの仕事に就いた。居酒屋のバイトはしたことがあったが銀座は接待のお客も多く、店の看板を背負ってするサービスは、緊張感が高かったという。店長が「蔵元の息子なんだから、ここで勉強できることはしていけ」と、売れ筋の酒を惜しまずに飲ませてくれた。その中には佐久の酒もあった。「佐久にもこういう酒があるんだ」と思った。自分の蔵の酒と比べて考えながら多くの酒を飲む経験は、本当に勉強になった。芙蓉酒造協同組合は復活蔵で、焼酎製造に活路を見出してきた。「協同組合」は前後復活した蔵が瓶詰を共同で行っていた名残だという。各地の特産品で焼酎を造るノウハウとバリエーションは、他の追随を許さない。

 
依田 昂憲

「父親は6代目ですが、いちばん苦労していると思うんです。その中で事業を繋いできたことには敬意を表します」と言いながらも「父の作った土台に安住することには抵抗がありました」という。自分が帰るからには、「焼酎の先にある新しい商品を」と考えたのが、信州生まれ酒蔵育ち野菜の酢「SURARA」だ。当時、果物の飲む酢はあったが、野菜の酢は新しかった。ANAの機内食に採用されたり、無印良品の「諸国良品」に取り上げられたりと、大きな注目を集めてきた。酒蔵で酢、というのは掟破りともいえる大胆な挑戦に見えるのだが、本人は「酢は気温が20℃くらいないと発酵しないので、寒い時期に仕込む日本酒の醸造には影響はしないですね」と至って平静だ。日本酒でも「純米吟醸 姫奏」が成果を上げ、「よよいの酔い」や「烈火」など、ユニークな酒もプロデュースしている。「蔵に入って8年目になるんですが、今年が自分発信の芙蓉にしていくスタートラインだと思っているんです」という。「音楽のときもそうでしたが、誰もやらないことに惹かれるし、自分の思いを込めたもので人を魅了したい。でも、子どもが生まれてからは、魅了するというより幸せにしたい気持ちが強くなってきましたね」という依田。どこまでもクリエイターであろうとする彼が、どんな花を咲かせるのか、目が離せない。

芙蓉酒造協同組合

385-0034 長野県佐久市平賀5371−1
TEL 0267-62-0340
FAX 0267-63-2786
http://www.fuyou.org/

創業1887年。佐久地域の東側に位置し群馬県境に程近く、秋になるとコスモスが咲き乱れるコスモス街道沿いで創業以来酒を醸し続けている。代表銘柄の「金宝芙蓉」とは「最上級に美しいもの」という意味で、我々の酒造りのスタンスや酒そのものに込めた願いの表れである。風土の恵みが与えるバラエティを尊重した手仕事の酒造りがモットー。

  • 金宝芙蓉 純米吟醸 Tsukuyomi

    日本神話で「月を神格化した、夜を統べる神」とされるツクヨミから命名。艶やかでフルーティな香りが穏やかに漂い、じんわりと広がる上質で柔らかな甘味。月のように妖しげな美しさで人々を魅了する純米吟醸酒。

  • 金宝芙蓉 純米 Mikumari

    日本神話で「水を分け与える分水嶺の神」とされるミクマリから命名。四方を山々に囲まれ、水系豊かな佐久の恵みが、味わいに幅を持たせ召し上がる温度帯でゆく川の流れの如く、刻々とその表情を変える定番の純米酒。

  • 金宝芙蓉 純米原酒 よよいの酔

    佐久市産特別栽培米100%使用。「世(よ)の中が良い(よい)感じに酔い(よい)しれる」というテーマから命名。すべての人が分け隔てなく酒を楽しめる世界を理想としたラベルのイラストも必見。

« back to list